「創業50年を振り返る」その2:失意と感動

創業50年を振り返る時、生涯忘れる事の出来ない大変な出来事がありました。

創業から3年目の昭和47年(1972)9月21日、弊社は「火の不始末」により工場を全焼してしまいました。これから何とかフルート製造が出来ると思った矢先の出来事であって、ショックと言うより目の前が真っ暗になり何も考える事は出来なく、私の心の中では先の事よりもうこれでフルート作りは終わりと諦め掛けていました。

一睡も出来ない一夜を過ごし、翌朝やっと工場の焼け跡に行ったところ大変驚いた事に社員5~6人が無言のまま焼け落ちた工場の灰の中から道具、部品等を探していたんです。これを見た私は目頭が熱くなりこれまでに経験の無い感動と、トップとしての責任を痛感し、何としても工場再建をするんだ、、、という気持ちに変わり、その日から行動した事を何十年も経った今でも鮮明に覚えていますが、私の目を覚ませてくれた、そして奮い立たせてくれた仲間達に今も心より感謝しています。

この火災を機に、社内では以前にも増して連帯感が強くなり半年後には同じ場所での新工場操業となり、更に質の高いフルートをお客様に使用して頂くという気運が高まり、結果この火災がこの度創業50年を経過したターニングポイントであった事は事実です。

これまで経営者研修会等で何度も「一人では何も出来ない」と言われてきましたが、これこそが正に言葉の意味であって、以後今日までこの言葉を教訓として仲間達と苦しい時も共に頑張りお陰様で昨年創業50周年を全社員と共に無事迎えることが出来たのです。

宮澤 正